LLM(大規模言語モデル)をAPI経由で利用する際、
「トークン」という単位が料金や性能の鍵を握ります。しかし、
「トークンとは何か?」
「どうやって数え、どうすれば節約できるのか?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。トークンの仕組みを理解しないまま利用すると、想定外の高額請求につながるリスクもあります。
この記事では、LLMにおけるトークンの基本的な概念から、主要モデルの料金体系、コストを抑えるための具体的な節約術までを網羅的に解説します。トークン数を正確に把握し、コストを最適化することで、LLMのビジネス活用をさらに加速させることが可能です。LLMの費用対効果を最大化したい方は、ぜひご一読ください。
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LLMにおけるトークンとは?文字数との違いを解説
結論として、LLMにおけるトークンとは、AIがテキストを処理するための最小単位です。これは単語そのものとは異なり、単語の一部や句読点、記号なども独立したトークンとして扱われることがあります。LLMは入力された文章をまずトークンに分割し、その並びに基づいて次に来るトークンを予測することで、自然な文章を生成する仕組みになっています。
文字数とトークン数は必ずしも一致しない点に注意が必要です。特に日本語は、英語と比較して同じ内容でもトークン数が多くなる傾向があります。日本語のトークン化はモデル固有のトークナイザー(テキストをトークンに分割する仕組み)に依存し、例えばひらがなより漢字の方が多くのトークンを消費する傾向が見られます。正確な数値を把握するには、OpenAIの「Tokenizer」のような公式ツールで測定することが不可欠です。
この根本的な違いを理解することが、LLMの利用コストや性能を正しく見積もるための重要な第一歩となります。英語では1単語が約1トークンになることが多いのと比べると、この差は大きいと言えるでしょう。
LLMのトークン数カウントが重要な3つの理由
LLMを利用する上で、トークン数のカウントはコスト管理と性能維持のために極めて重要です。なぜなら、トークン数はAPIの利用料金、モデルの処理能力、そしてエラー発生率という3つの要素に直接影響を与えるからです。これらの理由を理解することで、より効率的にLLMを活用できます。
第一に、APIの利用料金は基本的にトークン数に基づいて計算されるためです。多くのLLMサービスでは、「100万トークンあたり〇ドル」という形で料金が設定されています。したがって、送受信するトークン数を正確に把握し管理することが、そのままコスト管理に直結します。
第二に、モデルが一度に処理できる情報量(コンテキストウィンドウ)に上限がある点が挙げられます。各モデルには最大トークン数が定められており、この上限を超えた入力は処理できないか、古い情報から忘れられてしまいます。長い会話の履歴や大量の文書を扱う際は、この上限を意識しないと、AIが文脈を正しく理解できなくなる可能性があります。
最後に、トークン数の上限を超えると意図しない挙動を引き起こすリスクがあります。APIに上限を超えるリクエストを送信するとエラーが返されたり、生成される文章が途中で途切れたりします。モデルによっては入力テキストの一部を切り捨てて処理することもあるため、安定したサービス運用には、リクエストが上限内に収まるよう事前にトークン数を確認する仕組みが不可欠です。(出典:Building with Claude Documentation)
LLMトークン数をカウントする具体的な方法
LLMのトークン数は、公式のオンラインツールやプログラミングライブラリを利用して正確にカウントできます。感覚的な文字数での計算は、特に日本語の場合に大きな誤差を生むため、専用のツールを使うことが強く推奨されます。ここでは、代表的な3つの方法を紹介します。
最も手軽なのは、各LLM提供元が公開している公式サイトのツールを利用する方法です。例えば、OpenAIは「Tokenizer」というツールをWeb上で提供しており、テキストを貼り付けるだけで簡単にトークン数を確認できます。同様の無料オンラインカウンターは複数存在し、モデルごとに切り替えて使えるものもあるため、まずは試してみると良いでしょう。
次に、よりシステム的なアプローチとして、開発者向けのプログラミングライブラリを使う方法があります。Pythonで開発を行う場合、OpenAIが提供する「`tiktoken`」というライブラリが広く使われています。これを活用すれば、プログラム内で動的にテキストのトークン数を計算し、APIリクエストが上限を超えないように自動で制御できます。
また、一部のサービスではAPIのレスポンスで使用したトークン数を確認することも可能です。APIを呼び出した結果に含まれる`usage`情報を見ることで、入力(プロンプト)と出力(生成結果)それぞれの正確なトークン数が分かります。この情報を記録・分析することで、より精密なコスト管理が実現します。
主要LLMモデル別トークン上限と料金比較【2025年11月13日更新】
LLMの選定において、トークンの上限(コンテキストウィンドウ)と料金は最も重要な判断基準となります。2025年11月13日現在、主要なモデルは大規模なコンテキストウィンドウと、用途に応じた多様な料金プランを提供しています。ここでは、OpenAI、Anthropic、Googleの代表的なモデルを比較します。
各社のフラッグシップモデルは、数十万から100万トークン単位のコンテキストウィンドウをサポートし、非常に長いドキュメントの読解や複雑な対話の維持が可能になりました。ただし、高性能なモデルほど料金は高くなる傾向があるため、用途とコストのバランスを考慮したモデル選択が不可欠です。
以下に、主要3社の代表的なモデルのスペックをまとめました。料金は特に断りが無い限り、100万トークンあたりの米ドル表記です。料金や仕様は頻繁に更新されるため、実際の利用にあたっては必ず各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。
| 提供元 | モデル名 | 最大コンテキスト長 | 入力料金 (100万トークンあたり) | 出力料金 (100万トークンあたり) | 出典 (2025年11月13日時点) |
|---|---|---|---|---|---|
| OpenAI | GPT-5 | 128K トークン | $5.00 | $15.00 | OpenAI 公式情報 |
| Anthropic | Claude Opus 4.1 | 200K トークン | $15.00 | $75.00 | Anthropic 料金ページ |
| Anthropic | Claude Sonnet 4.5 | 200K トークン | $3.00 | $15.00 | Anthropic 料金ページ |
| Gemini 2.5 Pro | 1M トークン | $3.50 (≤128K) / $7.00 (>128K) | $10.50 (≤128K) / $21.00 (>128K) | Google Cloud 料金ページ |
OpenAI (GPT-5)
OpenAIのGPT-5は、テキスト、音声、画像を統合的に処理できるマルチモーダルモデルです。旧世代のGPT-5 Turboに比べて高速かつ低コストでありながら、同等以上の性能を持っています。特に、日本語を含む非英語言語の処理能力が向上しており、幅広い用途で高いコストパフォーマンスを発揮します。(出典:Introducing GPT-5)
Anthropic (Claude Sonnet 4.5シリーズ)
AnthropicのClaude Sonnet 4.5シリーズは、特に長いコンテキストの扱いや正確性に定評があります。最上位のClaude Opus 4.1は複雑な分析や研究開発で高い性能を発揮し、バランスの取れたClaude Sonnet 4.5は企業ユースケースでの費用対効果に優れています。安全性を重視した設計も特徴の一つです。(出典:Anthropic 料金ページ)
Google (Gemini 2.5 Pro)
GoogleのGemini 2.5 Proは、100万トークンという非常に大きなコンテキストウィンドウが最大の特徴です。大量のドキュメントやコードベース、長時間の動画などを一度に処理できるため、これまで不可能だった規模のタスクに対応できます。利用量に応じて料金が変動する体系のため、ユースケースに合わせたコスト計算が重要です。(出典:Google Cloud 料金ページ)
https://media.a-x.inc/llm-compareコストを抑える!トークン数を節約する実践テクニック
LLMの運用コストは、プロンプトの最適化と会話履歴の管理によって大幅に削減できます。少しの工夫でトークン消費を抑え、費用対効果を高めることが可能です。ここでは、今日から実践できる具体的なテクニックを2つの側面から解説します。
これらのテクニックを組み合わせることで、API呼び出し一回あたりのコストを削減できるだけでなく、モデルの応答速度の向上も期待できます。
プロンプトの最適化(簡潔化・英語利用)
最も基本的な節約術は、プロンプトをできるだけ簡潔にすることです。不要な修飾語や冗長な表現を避け、箇条書きを活用するなど、AIに与える指示を明確かつ短くすることが重要です。また、一般的に日本語よりも英語の方がトークン数が少なくなる傾向があるため、可能であればプロンプトを英語で記述することも有効な手段です。ただし、翻訳の精度やニュアンスがタスクの品質に影響する場合があるため、必ず事前にテストを行い、期待する品質が得られるかを確認してください。
実際に、AX CAMPの研修を導入した企業では、AI活用による劇的な業務効率化が実現しています。マーケティング支援を手掛けるRoute66様は、AI執筆ツールを導入したことで、従来24時間かかっていた原稿執筆がわずか10秒で完了するようになりました。(出典:生成AIの未来とは?ビジネスにもたらす変化や導入のポイントを解説)
会話履歴の管理と指示の工夫
チャットボットのように対話を続けるアプリケーションでは、会話履歴の管理がコスト削減の鍵となります。APIを呼び出すたびに過去の全履歴を送信すると、トークン数は雪だるま式に増加します。そのため、会話の要点を都度要約して送信したり、関連性の低い古い履歴は削除したりといった工夫が必要です。これにより、コンテキストを維持しつつ、送信するトークン数を最小限に抑えることができます。
このような業務プロセスの見直しとAIの導入は、人件費の最適化にも繋がります。SNS広告などを手掛けるWISDOM合同会社様は、AX CAMPの研修を通じて業務自動化を推進。結果として、採用予定だった2名分の業務負荷をAIで代替することに成功し、コストを抑えながら事業を成長させています。(出典:生成AIによるマニュアル作成で業務効率化!プロンプト例や活用事例も紹介)
【応用編】画像入力(マルチモーダル)のトークン数計算方法
画像とテキストを同時に扱うマルチモーダルLLMでは、画像のトークン数はサイズと解像度に基づいて独自の方法で計算されます。テキストとは全く異なる計算ロジックを理解することが、マルチモーダルAIのコスト管理には不可欠です。モデルごとに計算方法が異なるため、各社の公式ドキュメントを必ず確認しましょう。
多くのモデルでは、入力された画像をタイルと呼ばれる小さな領域に分割し、そのタイルの数に応じてトークン数を算出します。そのため、同じ画像でも解像度が高ければ高いほど、トークン数は増加する仕組みです。
OpenAI (GPT-5など) の計算方法
OpenAIのモデルでは、画像の解像度に応じて「低解像度モード」と「高解像度モード」で計算方法が変わります。低解像度モードでは、画像のサイズに関わらず一律85トークンとして計算されます。 一方、高解像度モードでは、画像を複数の512×512ピクセルのタイルに分割し、各タイルを170トークンとして計上、さらにベースとして85トークンが加算されます。 このため、詳細な分析が必要な場合はコストが増加します。(出典:Azure OpenAI Service documentation)
Anthropic (Claude Sonnet 4.5シリーズ) の計算方法
AnthropicのClaude Sonnet 4.5モデルでは、画像のトークン数はピクセル数に基づいて概算されます。公式ドキュメントによると、おおよその計算式は「(画像の高さピクセル数 × 画像の幅ピクセル数) / 750」とされています。ただし、これはあくまで目安であり、正確なトークン数はAPIの応答で確認する必要があります。例えば、1024×1024ピクセルの画像であれば、約1,398トークンと計算されます。
Google (Geminiシリーズ) の計算方法
GoogleのGeminiモデルでは、画像は258トークンとしてカウントされるケースが多いですが、これも画像のサイズや利用するモデルによって変動します。 例えばGemini 2.5 Proでは、画像の縦横両方が384ピクセル以下の場合は258トークンですが、それを超えるとタイルに分割されて計算されるなど、条件が細かく設定されています。 モデルやサービスによって計算方法は異なるため、利用するサービスの公式ドキュメントを確認することが重要です。
トークン数に関するよくある質問と注意点
LLMのトークン数を扱う際には、いくつか共通の疑問や注意すべき点があります。ここでは、モデルごとのカウント方法の違いや上限超過時の挙動など、実用上知っておくべきポイントをQ&A形式で解説します。
これらの点を事前に把握しておくことで、開発中の予期せぬエラーを防ぎ、スムーズな運用を実現できます。
Q. 日本語の1文字は平均何トークンになりますか?
A. 一概には言えませんが、おおよそ1文字あたり1.5〜2トークンの範囲になることが多いです。ひらがな、カタカナ、漢字、記号によってトークン化のされ方が異なるため、正確な数値を知るには前述のTokenizerなどの専用ツールで確認するのが最も確実です。概算で見積もる場合は、文字数より多めに見積もっておくと安全です。(出典:Google Cloud 料金ページ)
Q. モデルによってトークンの数え方は違いますか?
A. はい、異なります。各LLMは独自のトークナイザーを使用しているため、同じテキストでもモデルによってトークン数は変わります。例えば、GPT-5とClaude Sonnet 4.5では、同じ日本語の文章でもトークン数が違う場合があります。開発時には、利用するモデルに対応したツールでカウントすることが重要です。
Q. トークン上限を超えてAPIを呼び出すとどうなりますか?
A. 上限超過時の挙動はモデルやサービスに依存します。多くのAPIではリクエストがエラーとなり処理が失敗しますが、モデルによってはエラーを返さずに、入力テキストの末尾を切り捨てて処理する場合もあります。意図した通りの処理は行われないため、APIを呼び出す前に必ずトークン数が上限内に収まっているかを確認する必要があります。
Q. APIのレスポンスで実際の使用トークン数を確認できますか?
A. はい、多くのAPIでは可能です。OpenAIやGoogle、Anthropicなどの主要なAPIは、レスポンス情報の中に「usage」といった項目を含んでいます。ここには、今回のリクエストで使用したプロンプト(入力)のトークン数、生成されたテキスト(出力)のトークン数、そして合計トークン数が明記されています。この数値を監視することで、正確なコスト管理が実現します。
LLMのビジネス活用とコスト管理を学ぶならAX CAMP

LLMのトークン数を理解しコストを管理することは、AIをビジネスで成功させるための重要なスキルです。しかし、理論だけでなく、自社の具体的な業務にどう落とし込み、費用対効果を最大化するかという実践的なノウハウが求められます。もし、より体系的かつ実践的にAI活用を学びたいとお考えなら、当社の法人向けAI研修「AX CAMP」が最適なソリューションを提供します。
AX CAMPでは、本記事で解説したようなトークン節約術はもちろん、ビジネス課題に応じた最適なLLMの選定方法、効果的なプロンプト設計、そしてAPIを活用した業務自動化の具体的な手順まで、実務直結のスキルをハンズオン形式で習得できます。貴社の課題に合わせたカリキュラムを設計し、専門家が伴走しながらサポートするため、研修で学んだことをすぐに現場で活かすことが可能です。
AI導入による業務効率化は、コスト削減に直結します。例えば、株式会社グラシズ様はAX CAMPの研修を通じて、LPライティングの外注費を月10万円から0円に削減し、制作時間も3営業日から2時間へと大幅に短縮しました。AIの力を最大限に引き出し、競争力を高めるための具体的な方法論を、AX CAMPで学んでみませんか。まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。(出典:商用利用も安心!生成AIで画像作成するコツや注意点を解説)
まとめ:LLMのトークン数カウントを理解してコストを最適化しよう
本稿では、LLMを効果的に活用する上で不可欠な「トークン」について、その概念から具体的なカウント方法、コスト削減のテクニックまでを解説しました。LLMの運用コストと性能はトークン数に大きく左右されるため、この仕組みを正しく理解することが成功の鍵となります。
最後に、本稿の要点をまとめます。
- トークンはAIの処理単位:文字数とは異なり、特に日本語は英語よりトークン数が多くなる傾向がある。
- コストと性能に直結:API料金やモデルの処理上限に関わるため、トークン数の正確な把握が不可欠。
- 正確なカウントが重要:公式サイトのツールや専用ライブラリを用いて、利用モデルごとに計測する。
- 節約術は実践可能:プロンプトの簡潔化、英語利用の検討、会話履歴の管理でコストは大幅に削減できる。
- 画像もトークンで計算:マルチモーダルモデルでは、画像のサイズと解像度に基づき計算される。
これらの知識を活用することで、LLM利用時の想定外のコストを回避し、費用対効果を最大化できます。しかし、こうした技術的な知識を実際のビジネス課題解決に繋げるには、専門的な知見と実践の場が不可欠です。AX CAMPでは、貴社の状況に合わせた最適なAI活用法を、専門家の伴走支援のもとで体系的に学ぶことができます。トークン管理を含むコスト最適化から、具体的な業務自動化の実装まで、一気通貫でサポートします。AI導入の成果を確実なものにしたい方は、ぜひ一度、無料相談をご検討ください。
