生成AIの導入を検討しているものの、国内外の複雑な規制動向や法務リスクが分からず、活用に踏み切れない企業は少なくありません。
「どこまでが合法で、何がリスクになるのか」という疑問は、多くの担当者が抱える共通の悩みでしょう。2025年はEUで世界初の包括的なAI法が適用開始されるなど、まさに「AI規制元年」とも言える年です。
この記事を読めば、2025年最新の日本および海外(EU・米国・中国)の生成AI規制の全体像を把握し、企業が直面する主要な法的リスクと、それらに対する具体的な3つの対策(著作権侵害、情報漏洩、AIガバナンス)が明確になります。規制を正しく理解し、リスクを管理することで、AIを安全かつ効果的に事業成長へ繋げる方法を解説します。
AI活用における具体的なガイドラインの雛形や、法務リスクをクリアした上での成功事例をまとめた資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
生成AIの規制はなぜ必要なのか?

生成AIの規制は、技術の持つ潜在的なリスクから社会や個人、企業の権利を守り、健全なイノベーションを促進するために不可欠です。規制がないまま無秩序にAI技術が普及すると、著作権侵害や個人情報の漏洩、偽情報の拡散といった重大な問題を引き起こす可能性があります。
具体的には、主に以下のようなリスクが懸念されています。
- 著作権・知的財産権の侵害:AIが学習データとしてインターネット上のコンテンツを無断で利用し、生成物が既存の著作物と酷似してしまうリスク。
- 個人情報・機密情報の漏洩:従業員がプロンプトに顧客情報や社外秘の情報を入力し、それがAIモデルの学習データとなって外部に流出するリスク。
- 偽情報・誤情報の拡散:AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」によって生成された不正確な情報が、企業の意思決定や社会の混乱を招くリスク。
- 差別や偏見の助長:学習データに含まれるバイアスをAIが増幅させ、特定の属性を持つ人々に対して差別的なコンテンツを生成するリスク。
- ディープフェイクの悪用:人物の画像や音声を不正に合成し、詐欺や名誉毀損、世論操作などに悪用されるリスク。
これらのリスクは、個人の権利を侵害するだけでなく、企業のブランド価値を毀損し、社会全体の信頼を損なうことにも繋がりかねません。だからこそ、技術の発展と足並みをそろえて利用方法に一定のルールを設け、安全で信頼できるAI社会の実現を目指す動きが世界的に加速しているのです。
【2025年最新】日本における生成AIの規制動向

日本政府は、生成AIの活用に関して「イノベーションの促進」と「リスクへの対応」の両立を基本方針としています。この方針を具体化するため、日本初の包括的AI法である「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(いわゆるAI推進法)」が2025年5月28日に成立しました。。(出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)
この法律はEUのような厳格な規制(ハードロー)とは異なり、AIの研究開発や活用を推進することが主目的です。従来は事業者の自主性を重んじるソフトローが中心でしたが、2024年から2025年にかけてガイドライン整備や限定的な法制度化が進んでいます。これにより、企業の実務対応は、ソフトローを基本としつつ部分的にハードローの要素も考慮するハイブリッドなアプローチが求められるようになっています。
2025年時点での日本の主要な動向は以下の通りです。
- AI推進法の成立:AIに関する国の基本計画策定や、研究開発・人材育成の推進を定めています。悪用などによる人権侵害のリスクに対しては、国が調査を行い、事業者への指導や助言を行う仕組みが盛り込まれました。
- AI事業者ガイドラインの策定と公表:政府のAI戦略会議が中心となり、AI開発者や提供者、利用者が遵守すべき原則を示した「AI事業者ガイドライン」が策定・公表されています。 このガイドラインは、安全性や公平性、プライバシー保護などを柱とし、事業者が自主的にガバナンスを構築することを促すものです。
- 著作権に関する考え方の提示:生成AIと著作権の関係については、文化庁が考え方を示しています。これによると、AI開発のための学習データ利用は原則として著作権者の許諾なく可能ですが、「著作権者の利益を不当に害する場合」は著作権侵害にあたる可能性がある、との見解が示されています。
日本のアプローチは、厳格なルールで縛るのではなく、事業者が倫理的・法的な課題を自律的に管理する「AIガバナンス」の構築を重視しています。ただし、EUのAI法のように海外の厳しい規制は日本企業にも影響を及ぼすため、国内だけでなくグローバルな規制の潮流を常に把握しておくことが極めて重要です。
世界の生成AI規制マップ【2025年版】

世界の生成AI規制は、包括的な法律で厳しく管理する「EU型」、イノベーションを重視し自主規制を促す「米国型」、国家が強く統制する「中国型」の3つに大きく分類できます。日本は従来ソフトロー重視でしたが、近年はガイドライン整備などを進めており、企業の実務対応はよりハイブリッドなものが求められつつあります。グローバルに事業展開する企業は、各地域の規制アプローチの違いを理解し、対応する必要があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
| 地域 | 規制アプローチ | 主な手法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| EU | ハードロー(厳格な法規制) | EU AI法(リスクベース・アプローチ) | AIをリスクレベルで4段階に分類し、高リスクなものほど厳しい義務を課す。違反時の罰金も高額。 |
| 米国 | ソフトロー(自主規制中心) | 大統領令、NISTのフレームワーク | イノベーションを阻害しないよう、包括的な法律には慎重。安全性や公平性に関する指針を示すに留まる。 |
| 中国 | 国家統制型 | 生成AIサービス管理暫定弁法 | 国家の安全保障と社会の安定を最優先。サービス提供前の政府審査やコンテンツ検閲など、国家による強い管理が特徴。 |
| 日本 | ハイブリッド(官民連携) | AI推進法、AI事業者ガイドライン | 産業競争力強化を重視しつつ、ガイドライン整備や限定的な法制度化を進め、事業者の自主的なガバナンス構築を促す。 |
このように、各国・地域の価値観や政策目標によって規制のあり方は大きく異なります。特にEUのAI法は、EU域内でサービスを提供する日本企業にも適用される「域外適用」の効力を持つため、その内容は詳しく理解しておく必要があります。次のセクションから、主要な国・地域の動向をさらに詳しく見ていきましょう。
【EU】世界初の包括的ルール「AI法」の概要と影響

EU(欧州連合)の「AI法」は、世界で初めてAIを包括的に規制する法律であり、AIシステムがもたらすリスクに応じて異なる義務を課す「リスクベース・アプローチ」を最大の特徴としています。本法律は2024年に成立し、主要な義務は公布後の移行期間を経て段階的に適用される予定で、グローバルなAI規制の事実上の標準(デファクトスタンダード)になると見られています。(出典:Artificial Intelligence Act)
AI法では、AIシステムを以下の4つのリスクレベルに分類しています。
- 許容できないリスク(Prohibited AI):サブリミナル操作や社会的スコアリングなど、基本的人権を脅かすと見なされるAIシステムは全面的に禁止されます。
- 高リスク(High-Risk AI):医療機器、重要インフラ、採用・人事評価など、人々の安全や権利に重大な影響を与えうるAIシステムです。これらに該当する場合、高品質なデータセットの使用や人間の監視など、厳格な要件を遵守する必要があります。
- 限定的リスク(Limited-Risk AI):チャットボットやディープフェイクなど、利用者がAIと対話していることを認識する必要があるシステムです。利用者にAIであることを開示する「透明性義務」が課されます。
- 最小リスク(Minimal-Risk AI):上記以外の大半のAIシステム(スパムフィルターなど)が該当します。特段の法的義務はなく、自由に開発・利用できますが、自主的な行動規範の策定が推奨されます。
この法律は域外適用され、EU域外の企業でも、EU市場にAIシステムやGPAIモデルを提供・投入する場合のほか、「AIシステムのアウトプットがEU域内で利用される」場合にも適用対象になります。違反した場合、禁止事項への違反など最も深刻なケースでは最大で全世界の年間売上高の7%または3,500万ユーロのいずれか高い方という巨額の制裁金が科される可能性があり、EUで事業を展開する日本企業は、自社のAI利用がどのリスク分類に該当するのかを早急に特定し、対応する必要があります。
【米国】大統領令と州レベルでの規制動向

米国は、EUのような包括的な連邦法によるトップダウンの規制には慎重な姿勢を示しており、イノベーションの促進と競争力の維持を最優先するアプローチを取っています。その中核となっていたのが、2023年10月30日にバイデン政権が発令した「AIの安全、安心、信頼できる開発と利用に関する大統領令」でした。(出典:Executive Order on the Safe, Secure, and Trustworthy Development and Use of Artificial Intelligence)
しかし、2025年1月に就任したトランプ大統領は、就任初日にこの大統領令を撤回。続く1月23日には、新たに「米国のAIにおけるリーダーシップへの障壁撤廃に関する大統領令」に署名し、AI政策の方針を転換する動きを見せています。(出典:Removing Barriers to American Leadership in Artificial Intelligence)
バイデン政権の大統領令は、連邦政府機関に対し、高リスクなAIモデルに関する安全性検証の基準策定などを指示するものでした。これは、今後の政府調達などを通じて、開発企業に事実上の報告要件が生じる可能性を示唆するものでしたが、トランプ政権はイノベーションを妨げる規制を緩和する姿勢を鮮明にしています。この大統領令はあくまで連邦政府機関への指示であり、民間企業に直接的な法的拘束力を持つものではありませんが、連邦機関の調達基準などを通じて実質的な影響を与えると考えられます。
一方で、連邦レベルでの規制が緩やかである分、カリフォルニア州やコロラド州など、州レベルで独自のAI規制法を制定する動きが活発化しています。これにより、米国内で事業を展開する企業は、州ごとに異なる規制に対応する必要が出てくる可能性があり、今後の動向を注視する必要があります。
【中国】独自の規制強化とその背景

中国は、国家の安全保障と社会の安定維持を最優先事項とし、世界に先駆けて生成AIに特化した独自の規制を迅速に導入しています。その代表的なものが、2023年8月15日に施行された「生成AIサービス管理暫定弁法」です。(出典:生成式人工智能服务管理暂行办法)
この規制の背景には、AI技術を国家の管理下に置き、社会主義的な価値観に沿った形で発展させようとする強い意図があります。2025年に入ってもその方針は継続されており、実務上の解釈や追加のガイドラインが公表されるなど、運用状況は常にアップデートされています。主な特徴は以下の通りです。
- 社会主義的価値観の遵守:生成されるコンテンツは、社会主義の核心的価値観を体現し、国家の安定を損なう内容を含んではならないと定められています。
- サービス提供前の審査:中国では、世論形成に影響し得るタイプの一般向け生成AIに限定して、関連規定に基づく安全評価やアルゴリズム届出が義務付けられています。
- 利用者の実名登録:サービスの利用者は、携帯電話番号などに基づく実名での登録が求められます。
- コンテンツへのマーキング義務:生成された画像や動画などには、AIによって生成されたことを示す識別子(マーキング)を付与することが義務付けられています。
- 訓練データの合法性:AIの学習に用いるデータは、合法的なソースから取得する必要があり、他者の知的財産権や個人情報を侵害してはならないと規定されています。
中国の規制は、技術的な仕様や倫理原則だけでなく、コンテンツの内容そのものに踏み込んでいる点が、欧米や日本のアプローチと大きく異なります。中国で事業を展開したり、中国のユーザー向けにサービスを提供したりする企業は、これらの厳しい規制を遵守する必要があります。
生成AI利用で企業が直面する主な法的リスク

生成AIを業務に活用する際、企業は生産性向上という大きなメリットを享受できる一方で、いくつかの重大な法的リスクに直面します。特に注意すべきは「著作権侵害」「情報漏洩」「アウトプットの正確性」という3つのリスクです。これらを理解し対策を講じなければ、意図せず法的なトラブルに巻き込まれ、企業の信頼を大きく損なう可能性があります。
著作権・知的財産権の侵害リスク
生成AIにおける著作権リスクは、AIがデータを「学習する段階」と、コンテンツを「生成・利用する段階」の両方で発生します。
まず、学習段階では、AIがインターネット上から収集した著作物を無断で学習させることが権利侵害にあたるか、という議論があります。日本の著作権法では、情報解析などの目的であれば原則として許諾なく利用できるとされていますが、著作権者の利益を不当に害する場合は例外となります。
次に、生成・利用段階では、AIが生成したコンテンツが、学習元となった既存の著作物と酷似してしまうリスクがあります。ユーザーに他人の著作物を複製する意図がなくても、結果的に生成物が類似していれば著作権侵害と判断される可能性があります。このリスクを認識せずに生成物を商用利用した場合、権利者から損害賠償請求などを受ける可能性があります。
個人情報・機密情報の漏洩リスク
従業員が業務の効率化のために、プロンプト(指示文)に顧客の個人情報や社外秘の開発情報などを入力してしまうことが、情報漏洩の最も典型的なパターンです。
多くのクラウドベースの生成AIサービスでは、入力されたデータがAIモデルのさらなる学習のために利用される規約になっている場合があります。(出典:How your data is used to improve model performance) これにより、入力した機密情報がサービス提供者に渡るだけでなく、他のユーザーへの回答として外部に漏洩してしまうリスクも指摘されています。実際に、個人情報保護委員会も注意喚起を行っています。(出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について)
このようなインシデントは、企業の競争力を削ぐだけでなく、個人情報保護法などの法令違反に問われ、企業の社会的信用を失墜させる深刻な事態に発展する可能性があります。
アウトプットの正確性とハルシネーション問題
生成AIは、時に「ハルシネーション」と呼ばれる、事実に基づかないもっともらしい嘘の情報を生成することがあります。AIは情報の真偽を理解しているわけではなく、統計的に最も確からしい単語の連なりを予測しているに過ぎないため、このような現象が起こります。
企業がこのハルシネーションによって生成された不正確な情報を、ファクトチェックせずにマーケティングコンテンツや顧客への回答などに用いてしまうと、顧客に損害を与えたり、自社の信用を傷つけたりするリスクがあります。例えば、製品の仕様に関する誤った情報を顧客に提供してしまえば、クレームや訴訟に発展しかねません。生成された情報が他者を誹謗中傷する内容を含んでいた場合、企業のレピテーションリスクに直結します。
企業の対策①:著作権侵害を避けるための法的ポイント

生成AIによる著作権侵害リスクを低減するためには、利用するAIサービスの選定から、生成物の確認プロセスまで、一貫した対策を講じることが重要です。特に「学習データの透明性」と「生成物の独自性チェック」が鍵となります。
具体的な対策として、以下の3つのポイントが挙げられます。
- 学習データがクリーンなAIサービスを選ぶ
利用する生成AIサービスがどのようなデータで学習しているかを確認することが第一歩です。サービス提供者が著作権をクリアしたデータセットを利用しているか、あるいは学習データの出所について透明性を確保しているかを、利用規約などで確認しましょう。 - プロンプトを工夫し、独自性を高める
生成物に高い独自性を持たせ、既存の著作物との類似性を避けるためには、プロンプトの工夫が有効です。「〇〇風で」といった特定の作家名を指示することは、著作権侵害のリスクを高めるため避けるべきです。代わりに、自社のブランドイメージやコンセプトを詳細に指示することで、よりオリジナリティの高いコンテンツを生成できます。 - 生成物の類似性チェックを徹底する
生成されたコンテンツを公開・商用利用する前には、必ず既存の著作物と酷似していないかを確認するプロセスを業務フローに組み込みましょう。画像の場合は画像検索ツール、文章の場合はコピー&ペーストでの検索が有効です。この一手間が、将来の大きなトラブルを防ぎます。
これらの対策は、文化庁が示す考え方を踏まえ、自社の利用実態に合わせて社内ガイドラインに明記し、従業員に周知徹底することが不可欠です。
企業の対策②:情報漏洩を防ぐガイドライン策定

情報漏洩リスクへの最も効果的な対策は、何を入力してはいけないかを明確に定義した社内向けの「生成AI利用ガイドライン」を策定し、全従業員に遵守させることです。技術的な対策と合わせて、従業員の意識改革とルール徹底が欠かせません。
ガイドラインには、少なくとも以下の項目を盛り込むべきです。
- 入力禁止情報の明確化:「個人情報」「顧客情報」「社外秘情報(開発情報、経営戦略など)」「アクセスID・パスワード」などをリストアップし、原則として入力禁止とします。ただし、業務上必要で、かつ匿名化や専用環境の利用といった適切な保護措置が講じられている場合に限り、事前の承認手続きを経た上で例外的に利用を認めるなど、実務に即した運用ルールを設けることが重要です。
- 利用目的の限定:生成AIの利用を、承認された業務目的に限定し、私的な目的での利用を禁止します。
- 利用ツールの指定と管理:会社として安全性を確認し、契約したAIツールのみ利用を許可します。従業員が無断で外部ツールを利用する「シャドーIT」を防ぐため、利用申請・承認プロセスを定めます。
- 生成物の取り扱いルール:AIが生成した情報に誤りが含まれる可能性を前提とし、必ず人間によるファクトチェックを義務付けます。また、生成物を外部公開する際の承認プロセスも定めます。
- インシデント発生時の報告義務:誤って機密情報を入力した場合など、問題が発生した際に速やかに報告すべき担当部署と報告手順を明記します。
- 研修の義務化:ガイドラインの内容を全従業員が正しく理解し、遵守できるよう、定期的な研修やeラーニングの受講を義務付けることが極めて重要です。
これらのガイドラインを策定・運用することで、ヒューマンエラーによる情報漏洩リスクを組織的に管理できます。
企業の対策③:AIガバナンス体制の構築

単発のガイドライン策定に留まらず、AIを継続的に安全かつ倫理的に活用するためには、組織横断的な「AIガバナンス体制」を構築することが不可欠です。AIガバナンスとは、AIのリスクを管理し、説明責任を果たしながら、その恩恵を最大化するための仕組みやプロセスの総称を指します。
AIガバナンス体制の構築は、一般的に以下のステップで進められます。
- AI倫理基本方針の策定:自社がAIをどのような価値観(例:人権尊重、公平性、透明性)に基づいて利用するのかを定めた「AI倫理基本方針」を策定し、経営層のコミットメントとして社内外に公表します。
- 推進・監督体制の確立:AIの利活用を推進し、リスクを監督する責任部署や委員会を設置します。IT部門だけでなく、法務、コンプライアンス、事業部門など、関連部署のメンバーが参加することが重要です。
- リスクの洗い出しと評価:自社の業務におけるAIの利用シーンを具体的に想定し、著作権、情報漏洩、ハルシネーションといった潜在的なリスクを洗い出し、その発生可能性と影響度を評価します。
- ルールとプロセスの整備:リスク評価の結果に基づき、「生成AI利用ガイドライン」を具体化します。さらに、新しいAIツールの導入審査プロセスや定期的な利用状況の監査などを業務に組み込みます。
- 従業員への教育とリテラシー向上:構築したガバナンス体制とルールを全従業員に浸透させるため、階層や職種に応じた研修プログラムを継続的に実施します。
- 継続的な見直しと改善:AI技術や法規制は急速に変化するため、ガバナンス体制やガイドラインは一度作って終わりではありません。定期的にリスク評価を見直し、内外の状況変化に合わせてアップデートしていく運用が求められます。
強固なAIガバナンス体制を構築することは、リスクから会社を守るだけでなく、「信頼できるAI活用企業」としてのブランド価値を高め、競争優位性を確立することにも繋がります。
生成AIの規制に関するFAQ・よくある質問

ここでは、企業の担当者からよく寄せられる、生成AIの規制や権利に関する質問にお答えします。
生成AIを使って作成したコンテンツの著作権はどうなりますか?
現状の日本の著作権法では、AIが完全に自律的に生成したものに著作権は発生しない、というのが一般的な見解です。著作権法は、人間の「思想又は感情を創作的に表現したもの」を保護の対象としているためです。AIは法律上の「人間」ではないため、AIによる生成物は原則として著作物に該当しません。
ただし、人間がプロンプトに具体的な創作意図を持ち、AIを「道具」として使って表現を生成した場合、その人間の「創作的寄与」が認められれば、生成物に著作物性が認められる可能性があります。どこからが創作的寄与と認められるかの線引きはまだ明確ではなく、今後の裁判例の蓄積が待たれる状況です。
日本で生成AIの利用が法律で禁止される可能性はありますか?
ビジネス利用全般が法律で一律に禁止される可能性は極めて低いと考えられます。日本政府の基本方針は、イノベーションを阻害しないよう、リスクに応じて柔軟に対応するというものです。
今後、EUのAI法のように、個人の生命や権利に重大な脅威を与えるような「許容できないリスク」を持つ特定のAI利用については、何らかの形で制限される可能性はあります。しかし、企業の生産性向上に資する一般的な生成AIの利用が全面的に禁止されることは想定しにくいでしょう。
海外のAI規制法(EUのAI法など)は日本の企業にも適用されますか?
はい、適用される可能性があります。EUのAI法には「域外適用」という規定があり、日本企業であっても、EU市場にAIシステムを提供する場合や、EU域内にいる人々に対してサービスを提供する場合などには同法の規制対象となります。
例えば、日本の企業が開発したAIチャットボットを搭載したウェブサイトをEUの消費者向けに運営している場合などが該当します。グローバルに事業を展開する企業は、本社が日本にあっても、事業展開先の国のAI規制を遵守する必要があるため、特に注意が必要です。
従業員が業務で生成AIを使う際の最も重要な注意点は何ですか?
最も重要な注意点は、「機密情報や個人情報を絶対に入力しないこと」です。これが情報漏洩の最大のリスク源だからです。(出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について)
どんなに便利なツールであっても、社外秘の経営データ、顧客リスト、未公開の技術情報などをプロンプトに入力してはいけません。このルールを徹底するためには、前述の通り、明確な社内ガイドラインを策定し、全従業員に対して繰り返し教育・啓発活動を行うことが不可欠です。従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが、企業をリスクから守る上で最も効果的な手段となります。
規制に対応しつつAIを安全に活用するならAX CAMP

生成AIの規制動向は国内外で急速に変化しており、法務リスクを正確に把握しながら社内体制を構築することは、多くの企業にとって簡単なことではありません。「何から手をつければいいのか分からない」「自社だけでガイドラインを作成するのは不安だ」といった課題を抱えている担当者の方も多いのではないでしょうか。
最新の法規制やリスクに対応し、従業員のリテラシーを高め、安全なAI活用を全社で推進していくためには、専門家の知見を取り入れることが成功への近道です。当社の法人向けAI研修・伴走支援サービス「AX CAMP」は、単なるツールの使い方を学ぶだけでなく、こうした守りの側面も重視したプログラムを提供しています。
AX CAMPでは、各社の事業内容や利用シーンに合わせて、著作権侵害や情報漏洩リスクを最小限に抑えるための「AI利用ガイドライン」の策定支援から、全従業員が遵守すべきルールを学ぶリテラシー研修まで、一気通貫でサポートします。法的な懸念点をクリアにし、現場が安心してAI活用のアクセルを踏める環境を整えることで、初めてAIは真の競争力となります。
「自社に最適なAIガバナンスの形を知りたい」「他社がどのようにリスク管理と活用を両立させているか具体的な事例が聞きたい」といったご要望にもお応えできますので、ぜひ一度、お気軽に無料相談会へご参加ください。
まとめ:生成AIの規制動向を理解し、2025年に向けた企業対応を
本記事では、2025年最新の生成AIに関する国内外の規制動向と、企業が取るべき具体的な対策について解説しました。最後に、重要なポイントを改めて振り返ります。
- 規制の必要性:AIの規制は、著作権侵害、情報漏洩といったリスクから社会と企業を守り、技術の健全な発展を促すために不可欠です。
- 世界の動向:規制アプローチは、厳格な法規制を敷く「EU」、自主規制を重んじる「米国」、国家統制を強める「中国」に大別され、日本は米国に近いハイブリッド路線を取っています。
- EU AI法の影響:世界初の包括的AI法であるEUのAI法は、EUで事業を行う日本企業にも適用されるため、特に注意が必要です。
- 企業の3大リスク:企業が直面する主な法的リスクは「著作権侵害」「情報漏洩」「ハルシネーション(誤情報)」です。
- 必須の企業対策:これらのリスクに対応するためには、「著作権に配慮した利用」「情報漏洩を防ぐガイドライン策定」「AIガバナンス体制の構築」といった早めの検討が推奨されます。
生成AIは、正しく使えば業務を劇的に効率化し、新たな価値を創造する強力なツールです。しかし、その裏側にあるリスクを軽視すれば、企業の存続を揺るがしかねない事態を招く可能性もあります。規制動向を正しく理解し、自社に合ったガバナンス体制を構築することが、これからの時代にAIを使いこなし、競争を勝ち抜くための必須条件と言えるでしょう。
AX CAMPでは、この記事で解説したようなAIガバナンス体制の構築から、現場の業務を効率化する具体的なAI活用術まで、専門家が伴走して支援します。自社だけでの対応に不安を感じる方、AI導入を加速させたい方は、ぜひ一度無料相談をご検討ください。
